2023秋EGOK レースレポート

春EGOKが終わったのはついこの前のように思いますが、先月(8月)秋EGOKが開催されました。
前回は少し余裕があったので各部が終わった直後に記事を書きましたが、今回は両部まとめて、各部の分量は減らして書いていきます。

 

大会の様子を振りかえる前に、運営に関するお話(反省)。
フリートレースの大会は、試合そのものはeセーリングの場合だとたいていの場合1~2時間で終わります。では、その準備や大会後の作業にどれくらいかかるものでしょうか?

VRIの大会運営や、リアルレースの運営に携わったことがある人はなんとなく推測できると思いますが、VRIの場合もそれなりに時間を要します。JVRICのクラブレースなど手軽にやるものであれば、試合以外はほとんど時間がかかりません(SI&成績表等準備5分、結果ツイート5分、程度)。しかし、年1~2回程度のちょっと大きな、特別なイベント、となると話は違ってきます。

私は今回のEGOKのために何時間かけたのかを測ってはいませんが、試合時間の10倍以上は余裕でかかっていると思います。いつもそれなりの時間や日数を費やしていますが、今回はよりいっそう入念に準備しました。それは、前回の運営で課題や問題点がいっぱい見つかったからです。今回の準備では、考えたり悩んだりする時間がいつにも増して多かった気がします。

 

さて、その準備の成果はどうだったでしょうか。まずは選手の評価。現在アンケートで募集中で、すでにいただいている回答を見ると、良くなった点、元からまあまあ良い点、要改善の点があるようです。改善点のなかには私の認識していたものと認識していないものがありました。ですが、前回上がった問題点のいくつかは解消できていそうでした。
次に私や運営陣の評価。こちらもこちらで課題がまだまだ残っているものの、当日の進行から判断するに春大会からは前進した、という印象。毎回のように、予測しきれていなかった不慮の事態が発生するため、トラブルへの対応力をさらに強化できるよう準備する必要性を感じました。しかしながら私個人の感覚では、総じて収穫の多い、比較的よい大会だったと思います。準備をたくさんするほど、得られるものや学べることも多いのかもしれません。

運営の反省はこのくらいにして、試合を振りかえっていきましょう。

 

まずは個人の部。

47人が集まり、個人の部初の3フリート進行に。どうなることかとヒヤヒヤしましたが、ほとんど想定どおりに進行しました。
選手の数がとにかく多いので細かくは振り返れませんが、今回の見どころは、EGOKで実績を残してきた実力者勢vs初参加勢vs初の上位入賞を目指す常連勢、という構図だと思います。今までにないほど好展開を見せたと思います。特に最初の2レースを終えた後は上記の構図が際立っていたように見え、興奮したのを覚えています。その後大会が進むにつれ、艇種が変わっても安定している選手と、不安定さが表れてしまった選手が出てきてトップ層がはっきりしてきたものの、メダルレースに進出した上位10人を見ると、この3つの勢力がほどよく混ざっていました。

メダルレースの話に行く前に、R1~6までの話をもう少ししましょう。大会が進むにつれてトップ層がはっきりしてきたと書きましたが、その他の選手との違いは具体的にどこにあったのでしょうか?

私はスコア記入など運営業務があった関係上、リアルタイムではレースをじっくり見られませんでしたが、少し見ただけでもその違いは分かった気がしますし、改めて優月さんの配信アーカイブを見てみて、より明確になりました。
それは、基礎的なことがどれだけ身についているか、だと思います。EGOKは、全日本選手権や国際大会などと比べると、参加している選手のレベル幅が広いです。そうなってくると、上位を目指すために必要なのは、日本や世界でのトップクラスの技術と精神、というよりも、ヨットレース・VRIで勝つための基礎的な操船力と知識です。

簡単に順位が落ちてしまう人、途中でなかなか順位を上げられない人は、基礎を見なおしてみましょう。
VRIを練習をしていくなかで「ボタンぽちぽちにそんな必死になる意味があるのか。ゲームの風を読めるようになって意味があるのか」と葛藤される人もいるかもしれません。しかし、操船力と風読み力を一定の水準まで磨くことで初めて見える景色があります。初めて気づけるヨットレースの奥深さ、面白さがあります。
基礎、とひと言で書きましたが、それはかなり広い範囲での基礎であり、習得するにはなかなか時間と労力がかかると思いますが、めげずに練習してみてほしいです。

メダルレースの話に戻りましょう。

47人中10人という狭き門をくぐった選手を、まず前述の3勢力に分けて確認してみます。
(敬称略)
過去EGOKで実績を残してきた実力者:悠航 古川(横国)、アントマン(横国)、kaikun(慶應)
初参加:kuyc_31471(京都)、star1(東工)、408(慶應)、Gaku(高知)(408, Gakuは団体の部参加経験あり)

初の上位入賞や表彰台を狙う常連:トッティ&tottexi(横国)、"じゃまーる"(成蹊)、Sabosan(滋賀)
これだけでワクワクしてくるのに、R6終了時の点数差が小さく、最後は得点2倍のため、上位6人ほどが優勝争いに絡み、他の選手も3位入賞はギリギリ狙えそう、といった状況でした。

運命のメダルレース、スタートをうまく決めたのは31471。他の優勝候補よりだいぶいい位置にいたので、 配信していた優月さんや運営陣は、そのままベストのコースを引いて1上で大きなリードをつければ優勝できそう、と思いました。しかし、です。風が少し読みづらかったのと、左右に艇団が分かれていったことなどが絡んだのか、早めにタックをしました。
一方、スタートが微妙だった悠航は第2線で苦しい走りをしていたものの、大きな振れが来る右海面にしっかり向かい、1上をギリギリ1位でアプローチ。31471さんは悠航さんをカバーしつづければよかったのかもしれませんが、やや低い位置で左海面に向かう優勝候補のアントマンのケアもしなければなりませんでした。
1下で悠航さんがリードを広げそのまま優勝。31471さんはその後大きなミスなく準優勝。3位争いはトッティとstar1、同点でメダルレースに突入したので、メダルレースで上位だったほうが3位。最後の下りレグに入るときは4位star1、5位トッティの並びでしたが、最後の最後、鼻の差でフィニッシュラインを先に横切ったトッティが3位入賞。
今後も艇種をちょくちょく変えることがあるので、どんな艇種が来ても大丈夫なように練習するのがおすすめです。

 

お次は団体の部。

今回は18団体エントリーで、キャンセルも早退もなしの18団体参加でした。4つの大学が2団体出場なので、14大学が集まったことになります。その点だけ見ればよさそうなものですが、レースがまさに始まるというタイミングで、VRIのアップデートという恐ろしいイベントがありました。
数カ月前や1年前までなら、アップデートと聞いてもそこまで怯える必要はないですが、少し前のアップデートでゲームがこれまでにないほど崩壊したこともあり、eセーラーの多くがアップデート不信に陥っていました。個人の部ではその問題のアップデートがキャンセルされた状態で平和だったのに、どうしてこのタイミングでまた、と嫌な予感しかしませんでした。

予想どおり、そのアップデートにより問題が生じました。一部の選手は、通信切断、通信不良をはじめとしたゲームの不具合に見舞われ、運営はレースの順位表がしばしば記録できませんでした。延期するべきかどうか悩みましたが、eセーリングで延期するという発想が元々なかったのでその計画をしていなかったですし、被害が全員には出ていないこと、いつ不具合が改善されるのかわからないことなどから、そのまま実施することにしました。
そういう事情があるので、予選レースを真剣に振り返るのは難しいです。予選レースが進んでいくにつれ、増えていく失格艇の数。失格にはなっていないものの確実に様子がおかしい艇がちらほら。今回は特に、深刻な不具合に出くわさない運と、チーム内に不具合が発生してもそれを補えるほどの実力が必要だったのかもしれません。
ちなみに今回もJ/70だけを使用しましたが、時短のためコースをUpwind S, Mの2種類を使い、またR0の関係から予選レースを6本から5本に減らしました。次回どうするかは考え中です。

結局、決勝レースに進んだのは以下の6団体でした。

横国大B、慶應大、東工大B、東工大A、滋賀大、東京大A(R5終了後の順位順)

1,2,3位がそれぞれ約10点差、4,5,6位は3位と約30~40点差と、ドラマがありそうな並び。重要な決勝レース1本目、横国大Bが2位以降と差をつけ独走態勢に。東工大Aが6位に落ちてしまった以外に大きな動きはありませんでした。
続く2本目、横国大Bはまたしても安定感を見せ、そのまま優勝へ(昨年度の秋期大会ぶり)。その次に良い走りをしたのは滋賀大。最終順位は4位と大健闘。Sabosanがすばらしい走りをしてチームを引っぱりました。慶應大と東工大Bは何かケースが起こったりすれば順位が入れ替わりそうでしたが、最終レースは同点で順位そのまま。慶應大は準優勝で、団体の部としては初の表彰台です。東工大Bは3位入賞。東工大Aも決勝に進み6位。過去に団体の部で入賞したときのメンバーがほぼいないなかで速い東工大が復活したのは、先輩たちもうれしいことでしょう。東京大Aは5位。東工大と同様に、前回大会から大躍進した大学です。今後のさらなる活躍に期待。

(幸運にも、あるいは必然か、決勝レースは失格艇が出ず、少なくとも表面上はゲームの不具合はなさそうでした)

ゲームの不具合のせいで本調子が出しきれなかった団体がいることを考えると、今後の決勝進出校がどうなるのか本当に分からなくなってきます。次回の春期大会がとても楽しみです。あとは、VRIがよりよい品質になることを祈るばかり。


今年は年末あたりに、大学1年生をおもに対象とした新人戦の開催を計画しています。上級生eセーラーの皆様、大会の情報をつかんだら1年生に共有お願いします。


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